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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
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東京都港区白金台――。
恵比寿や目黒、高輪にほど近いその場所は、バブル期に「シロガネーゼ」と形容されたようにお金持ちのマダムが住まうイメージが強いが、実際は大邸宅というより高層の建物が建ち並び、お洒落なカフェやレストラン、ブティックや美容室が軒を連ねる。
あたし達を乗せたタクシーは、外苑西通りから明治通りに入ってすぐの場所にある、洋風の大邸宅に向かった。
高い土地値だろう場所に、贅沢すぎる広大な敷地面積と、それに比べれば小さくも思えるほどの白亜の洋館。
明治や大正時代の館のレトロな雰囲気を引き継いでいながら、やはりどこか己の権勢を顕示したいかのように華々しい。
自動で開いた正門を潜ったタクシーは、噴水のある中庭を横切りながら、建物の正面……いわゆる車寄せと呼ばれる屋根のついたエントランスで停まり、そこで専務と朱羽と共に降りた。
大きい木の扉を開けると、広すぎる玄関。
両側から色とりどりの光を差し込むステンドグラスの窓を背に、白いエプロンに黒いワンピースという、昔ながらのメイド姿の女性がずらりと並び、その中に前歯がないやにやして見ている老人、虚ろ顔の痩せ細ってひょろひょろしている若い男、そして小太りの短躯の男が端に並んだ。
あたしが誰なのかという好奇の視線と、朱羽に寄り添われているその嫉妬の視線は、従業員として控えめながらもあからさまな悪意で。
あたしは密やかに嫌な汗をかいた。