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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「本音を言えば、あたしが慕う者達の心の傷をつけただけではなく抉って塩をつけたその落とし前をつけて欲しいと思います。彼らは、ご当主達がしたことが起因で、忍月を嫌っている。だからご当主が幾ら、朱羽や専務に跡継ぎになってくれと、力で推し進めようとも、それは虫がよすぎる話だと思ってます。ふたりに忍月というプレゼントをした気でいても、結局はふたりに体のいい玩具を押しつけ、自分の望む操り人形としてしか見ていない、と」

 当主の瞳が揺れた。


「最初、そう憤りを感じていました。なぜ家族というのなら、ふたりの望む未来をあげないのかと。なにが家族なのだと。だったら、あたしの望む未来を与えようとした名取川さんの方が、よほど家族です」

 専務と朱羽の視線を感じる。

「だけど、そうしたご当主と美幸夫人のおかげで、専務は朱羽を助けるような人柄になりました。自分がされて嫌なことを朱羽にはさせるまいと、育った自己犠牲の精神が、専務にはあります。そのおかげで朱羽の心は専務に守られ、そしてあたしと出会ってくれました。もしもご当主と美幸夫人が専務を愛して朱羽を愛していたら、あたしとは巡り会うことがなかった。そう思えば、ご当主に感謝しなくてはなりません」

「………」

「すべての過去は、今に繋がるための意味のあるはパズルの欠片。だとすれば、朱羽と専務が忍月に生まれついたのも意味があると思います。そのパズルの嵌め方を、ご当主は間違えられた。美幸夫人という他人に唆された形で。あたしは、ご当主や美幸夫人を責められるだけの、おふたりのことを知りません。おふたりを非情だ、人間ではないと責められるだけの、おふたりの本当の心を知らない。そして朱羽や専務もまたそうでしょう。ご当主達は、まるで会話がなかった。ご当主は、あたしに……祖父として揺れる心があると仰せになられました。それをふたりにお伝えになっていますか?」

 当主はすっと目をそらした。

 あれだけ言っても、本家で話合いはなされてなかったらしい。

 きっとふたりは怒られたのだろう。スマホを見れないほどに。

「朱羽、専務。ふたりはこんな目になっても、それでも当主に反撃をして忍月をどうこうしようという結論にはなっていないはず。奪われたものもあるけれど、忍月だからこそ与えられたものもあるはず」

 どうかお願い。
 
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