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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

 専務は、ゆったりとした口調で言った。

「俺達の要求は三つ。

ひとつは俺達が選んだパートナーを認め、俺達の結婚に口出ししないこと。見合いや政略結婚なんてもってのほかです」

「む……」

 当主は口ごもった。


「ふたつめ。俺達は美幸さんに恨みを持っています。その美幸さんの処遇を、陽菜に任せます」

「あ、あたしですか!?」

「そうだ。妥協案を見つけろと提案したのはお前だ。それにお前だけは彼女を理解したいと言った。ならばその結果に俺達は従おう。できるか」

 責任重大だ。

 だけど――。

 嫌いだから敵だからと追い出すことは簡単だ。だけどその簡単なことを誰も出来なかったことに、忍月の歪みがある。

 その歪みの原因を正さない限り、幾ら辣腕の彼らとて忍月に縛られたまま。そしてきっとそれが出来るのは、第三者なのだとあたしは思うのだ。

「……はい、やります」

 専務は頷いている。

「そして三つ目の条件は、朱羽を陽菜と共に、月代さんのシークレットムーンに働かせること」

「なんと……、朱羽を別会社に働かせる気か」

「はい。財閥を背負う身でありながら、シークレットムーンにも所属させる。シークレットムーンは朱羽に良い方の影響を与えた。それを切るには、今の朱羽を否定することになる」

「……っ」

「シークレットムーンを忍月財閥直下の企業にします。忍月コーポレーションの下ではなく、同列に。同時にOSHIZUKIビルに居る弟達の会社も同じく。つまり俺の弟達を介して、忍月財閥に同調させる。そして俺も、当主の後を引き継いで忍月コーポレーションの社長の座を就きます。忍月コーポレーションを含めた四つの会社を、弟達を通して忍月財閥の動力にします」

「忍月を変える気か? 伝統を重んじているワシが改革を許すと?」

「許さざるを得ません。なぜなら俺と朱羽で、世界の忍月財閥にさせるんですから」

 世界……。

 朱羽も専務も外国語は堪能だ。特にアメリカなら生活をしていたのだから、現地の状況は把握出来ている。
 
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