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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  

「初代忍月善助を助けた石油国の王族は、今や友好関係を築くのではなく、従属と献上金を求めている。そこから脱却し、必ずや肩を並べさせます。あなたはその現実をいつも憂えていたはずだ」

 悠然と腕を組んで、超然と専務は笑う。

「出来るのか、お前に」

「やってみせます。俺の代で出来ないのなら、朱羽の代でやらせます。そのくらいの手腕なくして、忍月の当主は務まりません。だな、朱羽」

「はい。俺の力不足の部分を、シークレットムーンと渉さんに鍛えて貰います。俺が、渉さんの夢を受け継ぎ、必ず現実のものと完成させます」

 朱羽も強い目をして、言い切った。

「忍月の輝かしい未来のためには、今の状況を変えねばならない。その力を発揮するには、俺はシークレットムーンと陽菜が、渉さんは沙紀さんが必要です。こちらの条件が却下されるのなら、残念ですが俺と渉さんは当主の座を辞退させて頂きます」

 逆転劇――。

 当主の力に脅かされていた兄弟は、今や嫌がっていた当主の座をかけて当主を脅かしている。

「朱羽、それは……」

 あたしが手紙にしたためたから?

 あたしが、結城達と話し合ったこと……。


――忍月財閥の次期当主候補をため口で扱き使えるのって、すごくね? しかも俺のダチだよ。

 最初は結城の冗談から始まった。  

――なあ。あいつが次期当主のまま、シークレットムーンにも働くっていうことは駄目なのかな。大体、忍月の現当主だって、忍月コーポレーションの社長やってたんだろ? うちは香月が来てくれるのなら、香月が財閥背負っていても別にいいんだし。

 朱羽が当主になって、さらにシークレットムーンにも働いてくれていたら。あたし達の同僚でいてくれたのなら。

――香月なら、忍月もうちも両立できそうな気がするんだけれど。まあ香月の気持ち次第だけれど、お前ら財閥の御曹司がうちで働くの反対?

 誰も反対する者はなく。

――香月なら財閥の方で問題起きても、俺達が助けてやれるしさ。

――忍月財閥直下のシークレットムーンっすか? なんかすごく大出世っすよね? けどうちもまだ危機を完全には脱していないし、課長をうちだけで使うっていうのもどうっすかね。そのせいで課長が、忍月で叩かれたりでもしたら。財閥の業務とかは、俺らお手伝いできないし、課長ひとり大変になる気が……
  
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