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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

――ひとりだけを大変にしなければいいんじゃない? もしもの話、当主が妥協して、すべての問題点がクリア出来るのだとしたら。専務と香月のふたり体制で忍月財閥を動かしてみるっていうのは? 香月はまだ若いし、次期当主みたいな形でも、専務を補佐して色々と教えて貰いながらうちに務めて、社会情勢をリサーチしたりコネを広げていけば。正直専務は、一企業のたかが専務にしておくのは勿体ないし、香月もそう。だったら、すべてを手に入れれば?と思うんだけど。

――そんな大団円、出来るのかなあ。香月ちゃんも専務も忍月を嫌っているわけでしょ? まずは彼らの意志が大切だよ。……仮に忍月当主の意を汲んで、彼らが望むような環境で当主になれるのだとしたら、財閥の方が居心地いいとか辞めちゃわないかなあ。杏奈、香月ちゃんとプログラムしたいのに。

――それは、専務がそうさせないっす。あのひと、沙紀さんと弟溺愛しているっすから、課長をシークレットムーンに返してくれるっす! 課長が望む環境が作れたのなら、専務も同じ環境になるってことっすよね? だったらあの専務なら、沙紀さん連れて当主をやるといいそうっす。

――俺さ、専務が当主になっても、専務のためになにかしてぇと思うんだよ。ここまで色々シークレットムーンの危機を救って貰っててさ。あのひとも、俺好きなんだよな。

――結城社長、俺もそう思ってるっす。あの兄弟なら、俺も協力したいっす。協力っていってもずば抜けた頭脳とイケメンっすから、利益還元?

――どっちに転んでも、忍月財閥直下シークレットムーンだね、あははは。


 都合のいい、願望のような会話だけれど、それでも……朱羽や専務も納得する形で、お祖父様と仲良く出来たら……そう思った。

 まったく話が通じない、サイボーグのようなお祖父様ではなかったから。

 だから、頑なに拒絶せず、ちゃんと本音を話し合って結論を出して欲しい……そう思った。

「あたしが手紙に書いたから?」

 そう聞くと朱羽は静かに頭を横に振り、微笑んだ。

「その前に、渉さんと話をしていたんだ。拒絶しないで迎合しろ、理解しあえというあなたの言葉に心を動かされて。そうしたらあなたの手紙だ。……嬉しかったよ、同じ意見に行き着いたから」

「いかがですか、当主」

 専務の促す言葉に、当主はしばし考えこみ、その場での返答を避けた。

 
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