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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
***
沙紀さんが女性だということを、専務は当主に口止めをした。
どんな使命を帯びてここに居るのかよくわからないが、彼女がいてくれるからこの屋敷のどこになにがあるのか、教えて貰える。
この大邸宅の一階は、応接室以外にも客間と使用人の寝起き出来る部屋と厨房があり、二階には忍月の住人の各部屋と食堂があるらしい。
風呂とトイレは両階に設置されている。
当主が考え込んでいた中で、専務が先に出ているようにとあたしと沙紀さんに指示をしたから、二階に上がり美幸夫人の部屋を訪問した。
沙紀さんがいるから心強い。
「私ね、あの女に勝つ必勝アイテムを持っているのよ」
そう、なにを持っているのかはぼかして、美幸夫人の部屋のドアをノックしたが、中から聞こえたのは――。
『具合悪いから寝かせて』
沙紀さんが笑う。
「きっと、陽菜ちゃんに見つけられたくない"証拠"を処分したりと大変なのよ。だけど一番は、その証拠がなくなっているからきっと焦っていると思うわ」
「なくなってる?」
沙紀さんは意味ありげに笑うだけだった。
「朱羽くんの部屋につれていってあげる。渉と当主とまだ話してるのかもしれないから、朱羽くんの部屋で待ってて? ちなみに陽菜ちゃんの部屋はないから」
にやにやと沙紀さんは笑う。
「え!? 客間……」
「駄目駄目! 朱羽くんが可哀想だし!」
「いや、でも……」
恥ずかしいじゃないか。
朱羽の家に来て、あたしを恋人だとまだ認められていない状態なのに、朱羽の部屋で寝起きするなんて。
それこそ、美幸夫人のような愛人止まりがでかい顔をしているようで。