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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
忍月家は、一階のエントランスホールは吹き抜けになっており、その奥にあたし達が居た小応接室、大応接室、客間が広がっており、さらに奥に厨房と使用人室が並んでいるそうだ。
二階は、エントランスホールの両側から続く階段を上ると、二階からは吹き抜けの高い天井からぶら下がっているシャンデリアを見ながら、玄関から入ってくる客を見ることが出来る。
二階は左に専務と朱羽の部屋、正面奥が当主の部屋、右には美幸夫人の部屋が並び、そしてそれらが取り囲んでいるのが、真ん中に配置された食堂と、書庫。
美幸夫人の部屋を後でまた訪ねることにして、あたしは朱羽の部屋で待機することになった。
朱羽の部屋はドアをあけると、三人掛け用の黒い革張りのソファが二対と大きな大理石がなにかで出来た白いテーブルがある。
奥角に少し背の低い間仕切りがあり、覗いてみるとそこには社長の居る病室にあるような簡易なキッチンがあった。とはいっても安物ではなく、高価そうなもので、間違いなく、あたしのマンションのキッチンよりは近代的で、朱羽のマンションのあのキッチンを簡素化したようなものだ。
朱羽の部屋が客間ではなく二階に用意されていたということは、彼は以前、本家に住んでいたことがあったのだろうか。たとえば、アメリカから帰った直後とか。
それとも、当主が用意したのだろうか、朱羽の部屋を。
色々なことを思いながら、八畳くらいのスペースにあるソファで座って待っていたら、ドアが開き朱羽が入ってくる。
「陽菜!」
朱羽にぎゅうぎゅうに抱きしめられ、窒息しするかと思うや否や、ゲホンゲホンとわざとらしい咳の音。
「とにかく座って、落ち着け。朱羽」
苦笑している専務だった。