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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
専務が沙紀さんを隣に呼んで、肩に手を回した。
それはとても自然な所作ながらも、沙紀さんの男の格好を誰かに見られたら、専務は同性愛者だと勘違いしそうなひとも出てきそうだ。
「当主からの返答は、保留だ」
専務が突然、本題を口にした。
「ええ。頭ごなしに拒まれませんでしたが、陽菜がどう結論を出すのか、それを見てから返答したいと」
「あたし次第ってこと?」
「そうだ。あのジジイの考えはわからねぇが、あのババアはジジイの愛人でもあった。僅かにでも情はあるはず。追い出せばいいってもんでもねぇし、あのババアが謝っておとなしくなるということも考えられねぇし、俺達とあのババアが和解することも出来ねぇ。あいつからなんて、意地でも出て行かねぇぞ? そんな殊勝なことが出来るのなら、親父が死んだ時に出ていったさ。あのババアは、カバや沙紀に忍月を乗っ取られて、追い出されたり不遇になるのを恐れて、なにか強気に出れる策を練っているはずだ」
「私もそう思うわ。色々の悪事の証拠を、陽菜ちゃんに取られまいとするはず。だからね……」
沙紀さんは背広の中から、巾着袋を取り出した。
「これ、私先に盗っちゃった」
あは、と沙紀さんが笑った。
「盗るって……」
朱羽がその巾着を手に取った。
一緒に中を見てみると、怪しい通帳やら写真やら誰かが書いたような証文やら、ドラマの小道具で出てきてもいいようなものだった。
「これで陽菜ちゃんは大きく出れる。これがある限り、あのひとは陽菜ちゃんの言うことを聞くはず!」
専務だけが驚かずに笑っている。
ああ、これか。
専務の指示で、沙紀さんは先回りして証拠品を手にしたのか。