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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「俺の横に立つのは、陽菜しかいない。それは昔から思っていた」

「……っ」

「ひとに言われたからとか、そうならないといけない環境だったから、仕方がなく……というのではなく、あなたの意志が欲しい」

 朱羽の甘くも切ない声に心が震える。

「こんな不安定な状態でいる今は、口約束だけしか出来ないけど、だけどわかってて。自覚が足りなさそうなあなたと、ちゃんと意志を通わしたい」

 朱羽の手があたしの手の指に絡む。

「俺の環境を整えてから、あなたを貰いに行く」

「……っ」

「俺はあなたと結婚したい」

 ぎゅっと握られる。

「俺のすべてをあなたにあげたい。そしてあなたのすべてを俺が貰いたい。あなたに、俺の本当の家族になって欲しい。あなたを俺のものだと、俺の妻だと皆に言いたい。死ぬ時まで、俺の愛する妻として傍にいて欲しい」

「……っ」

 唇が震える。

「俺と引き合わせてくれた、あなたの過去ごと……俺が貰いたい。ちゃんとしたら、名取川さんにも言いに行くつもりだ。あのひとは陽菜のお母さんだから」

「朱羽……」

「これが俺の気持ち。ずっとずっとあなたとは結婚を前提の付き合いと思っていた。だけど忍月があるから、きちんと地盤を立て直して、それからあなたに正式にプロポーズしようと思ってた。だから今はプレだけど、あなたの今の気持ちを聞かせて?」


 嬉しい……その心が肥大しすぎて涙になる。

 ぼたぼた零れるあたしの涙は、あたしの歓喜。


「やっぱり俺との結婚はまだ考えられない?」


 声が出てこないから、そのまま頭を横に振った。


「じゃあ……」

 朱羽の声が震えた。


「俺の……お嫁さんになってくれる?」


 朱羽はあたしの身体を捻るようにして、至近距離からあたしの返答を待つ。真剣で不安そうなその顔で、あたしの顔を覗き込む。
 
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