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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「よかった……。陽菜に拒まれないでよかった!」
朱羽は震える声を、次第に明瞭にさせた。
「これで結婚することはまた別の話とか、考えさせてとか言われて、困った顔されたら、俺……かなり落ち込んだから。ちょっと今、まだ完全に忍月から解放されたわけではないのに、渉さんに煽られて言っちゃった感が強いし」
あたしは笑った。
「笑い事じゃないよ。だってあなたは、同棲すら賛同してくれなかったし。あなたは結婚願望が俺より薄かったし……。もう少し、時と場所を選んでちゃんと色々と願掛けしてからしようとしてたんだ。本当に、拒まれたらどうしようと本当にドキドキしたんだからな」
朱羽があたしを抱きしめた。
服を着ていても伝わる、早い朱羽の鼓動。
……あたしの鼓動の速さと重なっている。
「ごめんね。元々結婚願望がない女だったの。仕事が大好きで、仕事さえしていればいいと。朱羽を初めて男として、恋愛として好きになったけど、朱羽の人生まで縛りたくないと思った。朱羽を自由にしたいと思ったけど……でも朱羽が他のひとと結婚をするのが嫌で。全力で取り戻そうと思って。矛盾してるよね」
「結婚願望がないあなたに、OK貰えたぐらいには、あなたを変えられたのかな、俺」
「うん。本気で恋愛すると、建前なんて吹き飛んじゃう」
「じゃあ同棲する?」
「まだ問題が終わってないでしょ?」
「終わったらしよう? 俺あのマンションを引き払えるのなら、違うところでもいいし、あなたがいいのならあそこでもいいし。勿論今度はちゃんと俺が家賃を払うし」
「家賃ってどれくらいかかるのよ!?」
「百万はいかないんじゃない?」
このボンボンめ!
シークレットムーンがそこまで給料は払えないよ。
「忍月財閥からも給料貰うつもり?」
「あ……どうなるんだろう。後で渉さんに聞いてみる」
「シークレットムーンだけで、あそこの家賃払えないでしょう」
「俺、アメリカで大学行きながら、FXやネット株でかなり儲けたんだ。こっち戻ってきた時、渉さんに言われて税金対策で土地も買った。忍月コーポレーションに居た時も、給料だけではなくボーナスも使ってないし。毎月家賃出すのが心配なら、あそこ買っちゃうのもいいね」