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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「買うって、どれくらいするのよ、あそこ」

「億はしないんじゃない? あ、そうだ。あそこのマンションひと棟買って、それで家賃収入をとるようにすれば? 税金対策にもなるし」

 このひと、どれくらいため込んでいるんだろう。

 なんだか聞くのが怖い。

「それとも都心にする? 駅から数分で眺めがいい場所はどこかな。……はあ、早く来ないかな陽菜と同棲したり、結婚したりする未来」

 嬉しそうに、朱羽はあたしの頭の上に頬をつけた。

「今は口約束でごめんね。だけどちゃんとするから、その時まで待っててくれる? 誰のものにもならないで待っててくれる?」

「あたしは、朱羽だけだよ。どこにも行かない。ずっとずっと朱羽の横にいる。結婚という形じゃなくても、朱羽とずっと一緒にいれるのなら、それでもいいから」

「俺が嫌だ。こんなに愛してるひとを、俺の妻と呼べないなんて。そんなの俺が耐えきれない。どれだけあなたが好きなのか、いい加減わかれよ」

 朱羽が頭の上にちゅっちゅっと音を立ててキスをしてくる。

「……なぁ、陽菜。俺のために、身体を張った陽菜を俺は忘れない。こんなに綺麗な着物姿で、名取川さんの元でも頑張って、俺や渉さんですら怖いと思うひとに立ち向かったこと、俺は死ぬまで忘れない」

「朱羽……」

「正直、真下さんが霞んだ」

「言い過ぎだって」

 朱羽は静かに頭を横に振った。

「本当の話。俺のために頑張ってくれてありがとう。俺をそこまで愛してくれてありがとう。言葉に言い表せないほど、本当に嬉しかった」

「……っ」

「……あなたを愛してよかった。あなたを諦めずにいてよかった」

 そして綺麗に微笑む。

「この恩は、ちゃんと身体で返すよ」

「か、身体?」

「そう。陽菜が悦ぶことを、陽菜が死ぬまでしてあげる」

「ちょ……っ」

 朱羽の匂いが濃厚になった。

 とろりとした瞳。
 まさか発情!?
 
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