この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

機能はそれだけにとどまらず、営業用に特化した――、二日間課長に言われていていた木島くんの補佐したものは、なんとサイトのテンプレートとして出来上がっていた。
木島くんの、うへぇという蛙を踏みつぶしたような情けない声が部屋に響いたが、それはあたしも同じだ。
しかもサイトデザインが出来ない顧客のために、アンケートのような質問形式を進んでいけば、希望に近いものがイメージ結果として選択されてタブレットに表示される。つまりたたき台が、その場ですぐ出来るのだ。
また、たとえば動的なものを付け加えたいなど付加的な希望があった時のために、或いはそういう提案をするために、そうしたものを手動で組み立てた場合のイメージ案も出来るらしい。
それだけではない。プログラムが入った軽さ重視のサイトイメージ、すべて画像のみのやや重いけれどもデザイン性に優れたサイトイメージなど、クリックですぐに表示出来るために、はっきり言えば、顧客のイメージが固ってこちらが作業に入るまでの打ち合わせ二回くらいは確実に省略出来る。
営業も、あたしも。
WEBの知識なくても、タブレットを使えば視覚的な宣伝効果がある営業ができる――そんなものを、課長は作り出してくれたのだ。
「ではそのアプリのサンプルを見て頂きたいと思います。アプリを起動させると、IDパスワードが出てくるので、IDは皆さんの苗字、パスワードに私の苗字をローマ字入力願います」
苗字のローマ字入力!?
皆が入力している間、香月課長はにやりと笑ってあたしを一瞥した。
あたしはなんとなくわかったのだ。
課長は、きっとここで首謀者三橋さんに協力したと思われるひとを見つけ出す気ではないかと。
社長もいる、全社員の前で――。
「入力が出来れば、画面が変わりますので、そのままにしていて下さい」
課長が、皆のところを回ってくれとあたしに指示したので、あたしは後ろを回る。
あのメールの差出人のように、kozukiと入力して弾かれている人がいるのだろうか。
だが見たところ、入力画面から進んでいない社員はいなかった。皆次の画面に映っている。
え、協力者はいないの?
それとも察してわざと、kohzukiと入力したのかしら?

