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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 


「そのタブレットに入力されたIDは、今は一応皆さんがお使いのパソコンと同期し、さらにはあらゆるサーバに連携され、そしてこのアプリの管理者は、その記録を見ることが出来ます。どんなIDが何時何分に機械を使ってなにをしたのか。……過去一ヶ月以内の履歴が取れます」


 つまりそれは――。


「この場合社長が管理者となります。他の方にはない、管理者ボタンを押して頂けますか?」

 社長は香月課長の顔を見上げると、にやりとした顔をして、


「おお、すごいな。これなら僕がエロサイトを見ても、わかってしまうんだ。ちゃんとタイトルも出てるし。お? 僕だけじゃないみたいだなあ。凄いタイトルのがあるぞ?」

 ……明らかに、ぎくっとした男性社員がいるよ、しかもひとりじゃなく。

 君たちは会社でなにをしているんだ!


「……ほう? ここ?」

 社長が課長を見ると、課長は超然として笑っていた。


「社長。私、朝八時になにかしてますかね?」


 課長の言葉がなにを示すのかわかったのは、あたしだけじゃないだろう。


「いや、お前じゃないな。朝八時に動いているのはひとり。おーい……」


 すると、社長が声をかける前に、プログラム開発部の若手男性社員が、突然立ち上がった。

 江川兼彦、目つきの悪いスポーツ刈りの男だ。


「違う、俺ではないです!! その時間に、ログインしたのは……」

「ログインって、なんのことですか?」


 課長が薄く笑って、社長から手渡されたタブレットを彼に見せた。

 それは――。


「なにも書かれていないのに?」


 工事中と書かれただけの画面だった。
 
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