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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
朱羽と何度も口づけして、まったりとしていた時に、着物を思い出したあたしは、これ以上皺になる前にハンガーにでも吊らせて貰おうと、慌てて立ち上がった。
ハンガーがあるのは、ベッドの足元にある茶色いクローゼットのようだ。
クローゼットから大きめのハンガーを借りて、あたしは急いで帯を解く。
「あはは、本当に色々なの出てくるね、あなたの帯から」
「そう、名取川さんとっても詰め込んだの」
本当にドラ○もんの四次元ポケットさながらに出てくるものを、朱羽は他人事のように面白がって、ベッドに転びながら見ている。
ハンガーに吊るし、改めて着物をよく見てみたが、厚地だったのとくしゃくしゃとした絞り模様が幸いしてか、さほど皺がよくわからない。
「よかった……」
しわしわになった理由を言ったら、名取川文乃は凄まじい剣幕で怒るだろう。ひとまず、首の皮一枚にて命は繋がった。
染みとかないか入念にチェックをしているあたしに、ふわりと朱羽の匂いが漂った。
「そんなに着物が好きなら、好きなの買ってあげるから」
少しだけ、情事の後を思わせるような気怠げな声で、あたしの耳に甘く囁く。
「別に着物が好きなわけではないけど、これ名取川さんのだし」
「どうせ帯でぎゅうぎゅう締めていたら皺が出来るよ。着物より、俺の方に……」
「名取川さんに合わせる顔ないじゃない! へんな染みとかあったら先になんとかしないと……」
「妬ける」
朱羽が後ろからあたしを抱きしめ、あたしの肩に頭を埋めながら言った。
「名取川さん、名取川さんって。……俺がいるのに」
「は!? だって……」
「わかっているよ。彼女の協力があったからあなたがここにいることも。あなたを守るためにあなたを養女にしたことも。彼女、最初から陽菜を気に入っていたからね」
「だったら……」
「俺のいない間に、陽菜は名取川さんと一緒に居たんだろう? ……俺、あなたがいなくて、ここで寂しい思いをしていたんだよ……」
肩に熱い息がかかる。