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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

そんなジジイが、沙紀曰く、名取川家でカバの言葉に"祖父"として心が動いたのだと言ったそうだ。祖父としての心があったと自覚したのがまた軽く驚いたが、それに加えて名取川文乃と恋愛をしていた時が幸せだったのだとそう言ったらしいことが、それを思い出させたカバにジジイが一任した理由だと俺は思う。
その上であのクソババアを理解して欲しいという、ジジイのご希望。
私情に囚われた俺や朱羽が、理解しようと思うことすら全く不可能な出来事を、カバに言ったのはなぜか。
そしてカバはそれにより、ババア理解するために、使用人レベルまで目線を下げたのだ。名取川家の養女という肩書きを捨てても。
確かにこの屋敷では、使用人がババアの真の顔にもっとも近いところにいる。沙紀はババアに言い寄られているから、そういう面だけしか見れていないのだ。
俺達の知らないババアの顔があるのだろうか。
俺の母親を燃やしたあの顔が素ではないのか。
そう思えども、戦うカバを見ていると、俺達も因縁によるこのわだかまりや憎悪をなんとかしたいとも思う。
消化出来るのなら、だが。
ガシャーン!
何度もやられているということは、カバがへこたれないからだろう。
また飛出そうとした朱羽を掴んで、椅子に座らせる。
「客のために頭を下げ、泣いて怒って身体を張ったシークレットムーンの主任だろ? お前の部下だろ? あいつが疲れて戻って来た時に、お前はあいつをそっと抱きしめてやればいい。ここはお前の出る幕じゃねぇんだよ。カバの戦場だ。お前がカバを選ぶことで、それを強いたんだ」
「……っ」
カバ。沙紀と共に使用人を掌握しろ。
お前が息を出来る居場所は、俺達が与えたものではないのは、ここに入った時に気づいたはずだ。
朱羽と共に生きようとするのなら、外部からきたお前が本家の気質を変えろ。
ガシャーン!
再び鳴り響く音に、朱羽が膝に置いた手を握りしめ、唇を戦慄かせた。
それでいいんだ朱羽。
俺達が手出しをしたら、カバはいつまでも俺達の"囲われ者"だ。
カバがこの中で生きるためには、自分の場所を創り出さないといけない。
そのためには、俺達は邪魔なんだ。
ガシャーン!
カバ、お前のガッツによる化学変化、俺は信じている。

