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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

今度は、夕食の支度だというが、あたしの分は残ったものを、勝手に食べろと笑われる。
「だって新人の使用人なら、最後が基本でしょう?」
そう来たか。
「ありがとうございます! ようやくお嬢様ではなく、同僚だと認めて貰えて。お掃除頑張った甲斐がありました~」
そうよ、物は言い様捉え様。
広い社会でそれなりの人生経験を積んだ28歳、忍月の閉鎖社会に生きる若者に負けてたまるか。
シゲさんの号令で厨房に集う。
料理を作るのはシゲさんと、もうひとり影の薄いタエさんというベテランさん。
それ以外は配膳係だという。
「私、奥様にお持ち致します!」
はいと元気よく手を上げたら、シゲさんにじろりとかなり巨大に見える目で睨まれた。
「新人には大役任せられません」
ぴしゃり。
「それに奥様は、夕飯は食べたくないと仰られています」
「ドア越しで?」
「いえ、お会いしました。それがなにか?」
あたしならドアも開けないくせして、シゲさんならいいのか。
ということは、シゲさんの信任を得ないといけないの?
「では胃腸薬でも、シゲさんの代わりに……」
「既に渡してあります。壷を割ってばかり居る新人は、そこまでしなくてもよろしい」
……これは、お嬢様扱いしないけれど、手厳しそう。
クスクス嘲笑う声が、耳にうるさい。
シゲさんがパンと手を叩く。
「夕食の支度を!」
……といっても、どこになにがあるのかわからないんだ。
それなのに皆さっさと仕事して、いなくなる。
「新人。あなたも行きなさい!」
「あの、新人という名前ではないんですが……」
「では新人ではないんですか? あなたはここに務めてどれくらいですか?」
「……新人でいいです」
「では新人。あなたも行きなさい」
「どこに……」
「二階の食堂でしょ!? テーブルクロスを変えて!」
「はい!!」

