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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

食堂――。
他のひと達がキビキビ動き過ぎて、あたしが入る隙間はない。
意地悪をしてくる彼女達だけれど、それなりに優れた仕事ぶりを発揮する。あたしが反論できないくらいに。
「あの……、新しいテーブルクロスはどこに行けば、あるんでしょうか」
十畳ぐらいのスペースに横長に鎮座する楕円形のテーブル。
古城が出てくる洋画で見るように、その上には燭台や、果物籠、花籠などが飾られている。
テーブルの上には、地模様が入った白いテーブルクロスがかけられており、それを無視するように食器が置かれ始めて、慌ててあたしは言った。
「シゲさんから言われました。あたし、テーブルクロスを敷きます! 替えの布がどこにあるか教えて下さい!」
聞いてもてんで無視。
「すみません、テーブルクロスを……」
しつこく聞いたら、うちひとりが面倒臭そうに言った。
「あ~うるさいわね。替えるのならさっさと替えてよ!」
「だからその場所を教えて下さい、先輩!」
先輩と付加すると、少しだけしかめっ面が緩和されたようだ。
「外の備品倉庫」
それでも顔を合わせることなく、彼女は憮然として言った。
「え、備品が外にあるんですか?」
「なによ、私を疑う気!?」
上げられた顔。キッと睥睨される。
彼女は背中合わせにしていた別の使用人が、こちらを向かずに言った。
「使用人はチームワークが大切なんです。信じられないひとは、出ていって下さい」
「その通り。失礼ね、サツキさん」
「嘘だと思うなら、二階の住人に聞いてみればいいじゃない」
あまりに口々に言われるため、信じるしかなかった。
「替えるのなら早く備品倉庫に行って、早く替えなさいよ。そんなの外に出て聞けばいいでしょ。五分以内、ダッシュ!」
反射的に全力疾走をしている途中で、沙紀さんに会った。
「あ、陽菜ちゃん。頑張ってる?」
「頑張ってるよ!」
手を振り通り過ぎる。
「ちょ、陽菜ちゃん!?」
「ごめんね、今外の備品倉庫からテーブルクロスを早く持ってこなくちゃいけなくて。また後で!」
「……テーブルクロス?」
沙紀さんが怪訝な顔をしたのに気づかず、とりあえずは外に出た。

