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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

そういえば、外に出るなとくどくどと朱羽に言われたことを思い出したが、財閥のお屋敷の敷地内で朱羽が心配するような問題は起きないよ。
そう軽く思い、とにかくさっと行ってさっと帰ろうと思った。
「どうしました?」
薄暗くてよく見えないが、不意に横からの人影が声をかけてきた。
「すみません、備品倉庫ってどこですか?」
「ああ……、案内してやるよ。いへへへへ」
……なにやら奇妙に笑い声からして、これは男性か。
屋敷に入った時の歯っ欠けさんのようだ。
一応は警戒心を強めながら、それでも彼を頼り後をついていく。
「ここだよ。今、鍵をあけてあげるからね」
暗くてよく見えないが、物置小屋のようなイメージを持った。
ガチャガチャ音がして、ドアが開いた音がする。
「今電気をつけてあげるから、奥に進みなさい」
そう言われ、少しだけ逡巡したが、一歩足を進めた。
その時だ。
ドンッ!!
「え、ちょ……っ」
背中を押されて中で転んだ瞬間、ドアが閉められた。
「ちょっと!!」
「くへへへへ。後でゆっくり料理する……。くへへへへ……」
閉められたドアに、カチャカチャと鍵の音がした。
ドアの上は格子状になっているらしく、そこから月光が中に差し込んだ。
「開けてよ、ちょっと!!」
ダンダンと扉を叩いたが、ドアは開かない。
気味悪い笑い声は遠ざかっていく。
「開けてよ、ここ!!」
あたし、アホだ。
沙紀さんに聞けばよかったじゃない。
なんで言われたまま、外に行けば解決するなんて思ってしまったんだろう。外は危ないと、あれほど朱羽に言われてたのに。
「困った時には……スマートフォン!」
取り出したスマホを真っ暗闇に掲げて、ドラえもんの「どこでもドア」のように、ゆっくりと名前を口にしてみたが、なにが変わるでもなく。
ちょっと虚しい気がして、朱羽に電話をかけてみたが、呼び出し音が鳴っている間に、なんと充電切れ。
「うっそ……」
そういえば、朱羽とLINEのやりとりが出来なくなったあたりから、充電した記憶がない。

