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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「……違うだろう」
朱羽は冷ややかに言った。
「あのひとはお前を嫌っている。お前に言うはずがない」
「おきゅ、おきゅしゃまがそう言っていると、伝えられて……」
「誰に」
「た、たきゅさんのメイドが」
沢山のメイドが、彼に外に出てきたあたしを好きにしろとでも言ったのか。それであたしは外に出されたのか。
朱羽はため息をついて、あたしを見た。
「ねぇ、陽菜。やっぱり「あたし最後までやる。朱羽達に迷惑かけて本当に申し訳ないけど、このまま泣き寝入りしたくないんだ」」
あのメイド達の全員なのか、それとも一部の誰がそんなことを言ったのか、炙り出しても無意味だ。
なによりあたしは、聞いている分には美幸夫人のように"気に入らなければなにをしてもいい"という精神を貫く使用人達に対し、憤然と、やる気が出たのだ。
これが脅しだとしたら、こんなものに屈服する気はない。
「これくらいでへこたれるようなら、美幸夫人に会うことすら出来ないと思う。そんなんじゃ駄目なの。あたしは結城や衣里達の想いも背負って来ているんだから、逃げ出すわけにはいかない。忍月の闇の部分、進んでいくよ」
あたしは朱羽の手を掴んで握った。
「それとねぇ、このお屋敷SPって居ないの? 前に専務に言われたんだけれど。簡単には屋敷に入れないって。どこにも居ないよね」
すると沙紀さんが言った。
「衣里ちゃんとの見合いが終わって、当主が朱羽くんと渉連れて戻った時、当主が引かせたの。これも当主なりに、ふたりに気を遣ったのかなと思うけど……って、私渉に連絡してないわ」
沙紀さんはメールを打ち始める。
「あ、犯人は探さないでいいって伝えて?」
「いいの?」
「うん、いい。問題なのは、忍月の体質の方だと思うから」
「了解」
沙紀さんは笑った。