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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「ねぇ沙紀さん、テーブルクロスどこ?」
「え? きっと他の子がテーブルクロス敷いていると思うけど」
「それでもいいわ。こうなりゃ開き直って行くから。あたし、朱羽と沙紀さんと専務が居てくれるだけで、頑張れる」
あたしは朱羽と沙紀さんに笑った。
「わかったよ、陽菜。頑張れ。俺の手が欲しい時は言って。そしてどんな時でも、外に出る時は沙紀さんか俺か渉さんに言って? もうこんなことをしない。誰に言われても、ひとりで出ない。いいね?」
「うん、わかった。今回のことは、朱羽と専務が心配してくれていたのに、危険はなく大丈夫だとあたしが勝手に軽視した結果だと思う。スマホも充電切れてて」
「わかった。役に立たないのなら、俺が充電しておくから。貸して」
「ありがとう」
朱羽にスマホを渡しながら、面目ないと頭を垂らしたあたし。
「あ、ああああにょ~」
あの~と声をかけたいのだろう、歯っ欠けの男には、
「「「黙れ」」」
……あたしも存外に、腹立たしくは思っていたらしい。
「ただいま戻りました!!」
沙紀さんに付き添われて、屋敷の中にある備品室にて、ノリがぱりっときいた白いテーブルクロスを貰って、食堂に赴く。
当主と専務が着席して、朱羽を待っていたようだ。
最初から、美幸夫人の分は用意されていない。
当主がこちらを向き、他のメイド達と同様にぎょっとした顔をする。
いやいや、メイドの皆さん、専務から尋問受けていたでしょう。
「き、君……その格好は……」
「はい。働かせて頂こうと思い、渉さんと朱羽さんに無理を言いました」
スマイル。
「なぜ……」
「ただ"される側"であるのが心苦しくて。あたしなりに真心込めて、お仕事させて頂きたいと思います」
専務を見ると、専務がパチリとウインクをした。
「朱羽さんはもう少しで来ると思いますが、こちらのテーブルクロス、あたし持ってくるのが遅くなってしまってごめんなさい、先輩!」
当主の後ろに控えるのは、外に行けと言った先輩格の若い子。
言いつけられるとびくびくとしているようだけれど、誰が楽にしますか。
そうやって、いつかいつかと思って怯えていればいい。