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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon


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 隣室、B会議室――。


「なんであんなこと言い出すんですか!?」


 A会議室から課長の腕を荒く掴んで移動したあたしは、ふたりしかいない空間で、怒気をぶつけた。


「あんなことって?」


 対する課長はなにひとつ悪びた様子はなく、逆に愉快そうに口端を上げてあたしを見下ろす。


「確かに課長にご迷惑おかけしました。メール送信の犯人にまでさせてしまい、申し訳なく思っています。だけど!」

 あたしは叫ぶ。


「だけど、それでなんであたしと課長が付き合っていることになるんですか!」

「おや、一番いい方法だと思いませんか? これであなたは結城さんを守れた。そして私も早朝あなたの家に居た理由にもなる。あなたも二股かけた疑いを晴らすことができる。一石三鳥じゃないですか。……ね?」

 なにが、"ね?"だ!

 机に腰をかけて、そんなに可愛く首を傾けて、笑顔であたしを見下ろしたって、あたしが絆されると思うか!

「この会社が社内恋愛に厳しくないからといって、あたしが来たばかりの課長とどうこうなっていいと思いますか? 飲み会で課長モテてたの、自覚ないんですか? 今度は課長ファンが牙を剥きますよ!?」

 すると課長は、長い足を組みながら、美しい笑みを見せた。

「私は、結城さんのように、優しく接しませんから」

「は?」

「好きなひとがいるから異性には優しく出来ないと、はっきり言いましたが。そうしたら離れてくれたので、昨日あなたにウーロン茶あげれたんです」


 ぬぬぬ!

 この男、モテることに慣れている!

 まだチサをものにできていないのか!?


「だったらなおさら! 本命を大事にしてあげて下さいよ!」

「本命だから、結城さんを大事にしているんですか?」

 得意の質問返し。眼鏡の奥で細められている茶色の瞳は、決して笑っているようには思えない。逆にぞくりとしたものを感じて、あたしは怯んだ。

「な、なにを……」

「付き合ってないというだけで、結城さんが好きなんでしょう? 友情ではなく、恋愛の意味で。だから大事に思っている。違いますか?」


 怖っ!!

 おかしな言いがかりで、あたしを脅す気か!?
 
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