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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「あと形になっているものは? このキャベツは?」
「豚肉とのオイスターソース炒めの予定なのに、豚肉とオイスターソースがない。午前中まであったのに、他の材料や調味料も……」
どうも、急になくなったのが故意的な気がする。
犯人が一体なにをしたいのかよくわからないが、これは嫌がらせだろう。
「当主はオイスターソース炒めが好きなのにオイスターがない。ウスターソースで代用出来ればいいのに、味が違うし……。ちゃんと在庫を調べておくのが基本でしょう!?」
怒りの矛先を向けられたのは、壷を割ってくれた三人だ。
あたしは、充電が半分のスマホで調べた。
「ウスターソースがあるんでしたよね? 味の素と味噌あります? あ、蜂蜜でもいいようです」
「は!?」
「困った時はネットに頼りましょう。色々な知恵を貸してくれます」
沙紀さんがあたしの指示に従って、ウスターソースをお水で薄め、味噌と味の素を少しずついれて作ってみてくれた。
「ふふ、これならいけそう」
「ご当主に、それでお出しするなど!」
シゲさんは頭を抱えた。
「シゲさん。買い物から帰ってこないのなら、仕方ないじゃないですか。そうだ、あたしが作ったことにして下さい。それなら問題ないでしょう?」
「あなたが、作る?」
「はい」
一人暮らし歴が長いあたしと、
「私も手伝います」
たくさんの弟達を育てたらしい沙紀さん。
「在庫があるもので、それ以外に気に入って下さるものを作るのみ」
ありもので素早く作るのは慣れている。
これはまさしくあたしに出来ることだ。
誰も手伝ってくれなくても、沙紀さんがいる。
だからどこまでも頑張れる気がした。