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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
あたしは、スマホの画面を沙紀さんに見せた。
「ご当主はかぼちゃの煮ものが苦手で……」
「煮物にしなければいいでしょう? かぼちゃはβ-カロテンが粘膜にきくから、風邪をひきにくくします。冬至のお野菜なんだし、かぼちゃかぼちゃしなければいいのでは?」
沙紀さんとかぼちゃの種と綿をとり、小さく切る。
その手慣れた切り方、かなり彼女はお料理が上手と見た。
耐熱皿を用意させた沙紀さんはきったかぼちゃをチンをして、調味料を入れて潰して練ってくれている間に、あたしは沸騰させただし汁にみりんと醤油を混ぜながら、麻婆豆腐になれない麻婆の具を温める。この中には、既にオイスターソースの代わりになる味噌とウスターソースと味の素が入ってしまっている。
味を見ながら味を濃くしていき、沙紀さんが潰して伸ばしてくれたかぼちゃあんで包む。
「すみません、シゲさん。揚げるので油の準備を」
沙紀さんと手のひら大の団子を作り、惚けたようにしていたシゲさんを使って用意した油で揚げて貰う。
その間に、すったショウガを、醤油とみりんを加えただし汁にいれ、揚げたそれを皿によそって上からかける。とろみが足りない分はジャガイモをすって。
量が結構あるから、シゲさんにひとつ味見をして貰って、大丈夫だとお墨付きを貰った。
「缶詰、なにかありませんか!?」
するとさすがは財閥、ツナ以外に、かにとホタテの缶詰があった。
「ごま油はありますか?」
「あ、あります……」
「だったら、人参を千切りしてお湯で湯がいて。それをツナと一緒にごま油で和えて、レモンと酢を隠し味にして下さい」
あたしは、壷を壊した三人に言った。
「え、わ、私達も?」
「当然!! あなた達がやるの! 突っ立ってないで、忙しいのわかるでしょう。はい、やる!」
メイド達はあたふたと材料をとり、そこに沙紀さんが入ってくれた。
「味覇(ウエイパー)が少しだけあったわ!」
棚の奥から見つけたらしく、シゲさんが歓喜の声を出す。
味覇(ウエイパー)とは、半練状の中華スープの素とでも言えばいいだろうか。これひとつにエキスが詰まっていて伸ばして使うのだが、如何せん量が少ない。