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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「すみません、それあたしに使わせて下さい。あっさりとしたスープを作って頂きたいんですが、コンソメの素かなにかありますか?」
あたしは卵を割りながら聞く。
「固形なら」
「でしたらそれを溶かして、トマトとキャベツでスープを作って下さい」
「わかったわ。ミホ、マミ。トマトの皮むきを手伝って」
「「わかりました」」
沢山の卵をシャカシャカと箸で混ぜながら、ひとり手があいたメイドを見つけて、ネギを切ってもらい、缶詰のホタテとカニを細かくほぐして貰う。
そしてそれを卵と合体させ、少し擦ったショウガをいれる。
「すみません! ご飯を丸く深めの皿によそって下さい!」
味覇(ウエイパー)、醤油、ごま油、醤油、酒、砂糖を水で混ぜる。
昔一度だけ作った天津飯。
うまくいくかわからないけれど、柔らかでとろとろのところをはふはふと食べて貰えれば嬉しい。
とにかくもあまりに材料が少なすぎる中で、即席なんちゃって中華で、本当のものからはかけ離れているかもしれないが、幸いにも栄養価の高いものが残っている。
いつも材料費を削って生活し、僅かな時間でちゃちゃっと作れるようになった時、冷蔵庫の在庫を見ながらネットで調べる簡単料理ばかり作っていたのが、役に立ったみたい。
簡単だけれど、手は抜いていない。
朱羽、専務、そしてご当主。
少しでも、疲れた身体を癒やせますように。
「天津いきます!! 出来ているものから運んで下さい!!」
「「「わかりました!!」」」
なんだろうね、切羽詰まった中で皆で働くと、一体感が出たというのか。
本当に嫌なことばかりしかされなかったメイド達だけれど、笑顔で返事をされると、喧嘩していなくてよかったなあなんて思ってしまうんだ。
耐えたからこそ、この瞬間が嬉しい。