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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「芋でもなさそうだが……」
「あ、かぼちゃです」
「かぼちゃ?」
当主がさらに厳しい顔で言った。
「はい。ご当主はかぼちゃをあまり召し上がらないとお聞きしました。かぼちゃは栄養素がたくさんある、冬至の食物。違う形で是非召し上がって頂きたいと。風邪の予防になりますし、さきほども咳が辛そうだったので、体力をつけて欲しいと思いまして」
「………」
「シゲさんから、当主が召し上がられていたものが刺激の強いものばかりであったことを聞き、ちょっと不安を感じました。確かに元気は出るでしょうけれど、胃腸が悲鳴を上げるのではと。さらにカロチンの栄養素も少ないでしょうから、差し出がましくも少しでも身体にいいものをと、作らせて頂きました」
しーんと静まり返っている。
え、おかしなことを言ったかしら。
「当主のためだそうです」
専務が笑った。
「専……渉さんも朱羽……さんもお疲れでしたので、少しでも元気になって頂ければ、作った甲斐があります」
「陽菜」
朱羽があたしを見た。
「凄く美味しかった」
ふわりと、誰もが魅了されるその笑みで言われると、本当は飛び上がってやったー!と叫びたいけれど、そこを堪えて、ちょっと気取る。
「ありがとうございます」
「シゲ。やらせたのか、彼女に」
やばい、当主の声は固い。
お口に合わなかったんだ!
シゲさんが深々と頭を下げた。
「申し訳ありません」
「あたしの方こそ、申し訳ありませんでした!!」
「いや……ふたりとも謝る必要がない。確かさっき陽菜さんはここに来た。それから作ったのか? こんなに?」
「は、はい。あたしだけではなく、皆で作りました。初めてのことなのに、皆不平を言わずに協力してやって下さったから、なんとかこれ以上お待たせすることなくお持ちすることが出来ました」
「協力……うちの使用人が、か?」
「はい」
当主は深く考え込む。
「陽菜さんは調理師か栄養士か医者の資格があるのか?」
「いいえ、とんでもない」
「ではなぜここまで出来る?」
「スマホです」
「は?」
「困った時のスマホ様です」
「なんだね、それは」
思い切り、奇妙なものを見る顔をされた。