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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 


 だが――。


 美幸夫人のことを尋ねたのは、仕事を終えた後だった。

 仕事を阻むただのお喋りになるのを恐れて、食後に皆で茶碗洗いをして、さあ住人のお夜食まで休憩……その時まで我慢して、声をかけたというのに、誰一人として渋い顔をして答えてくれないのだ。


 守秘義務、だそう。

 つまり仕える主人の秘密は、たとえ仲間内でも漏らさない、それがメイドの暗黙の掟なのだとシゲさんは言うけれど、少しばかり怯えたメイド達の様子を見ていると、その掟とやらだけが関係しているようには思えない。

 そんな掟を気にするようなメイド達なら、朱羽の客人であるあたしを拉致させて、忍月の住人に料理を作れない責任を押しつけようと、全員で考え実行したりはしないだろう。

 もっと大きな力が、彼女達を脅かしているように思えるのだ。

 シゲさんだけが達観した表情でいるけど、教えてくれないし、さらに駄目元で美幸夫人とお話したいからドアを開けてくれと頼んでみたが、やはり駄目なものは駄目。

 メイド達と仲良くなっても、真摯な姿勢を見せても、美幸夫人と面会出来る道が拓かない。


 美幸夫人のことで、ミニスカメイド集団を脅かすものとはなにか。

 あまり動じていないシゲさんは例外なのか?

 
 やはりそれが気になって、シゲさんがいない時に、壷を割った三人を捕まえて聞く。

 この三人にいじめられたが、この三人が自ら進んで謝ってくれたことは、かなり信頼がおける人物と思ったのだ。

 昨日の敵は、今日の友。

 ……まあ、一日も経ってはいないけれど。


「ごめんね、ねぇなんで美幸夫人のことを口にしたらいけないの?」

 すると三人は顔を見合わせた。

「あなたも口にしない方がいいです」

 三人は口々にそう言い切った。

「なぜ? だってここの奥様でしょう?」

 また三人は顔を見合わせる。

「教えて? 誰にも言わないから。あたし、あなた方が壷を割ったことだって言わなかったのよ、信じて?」

 さらりとさりげなく、壷割りの単語を入れて見ると、三人の顔が強ばり青ざめた。

「……呪われるんです」

「は?」

「美幸奥様の悪口を言うと。それで実は前に三人が発狂したような叫び声を上げて、ここから出て行きました」

 三人の顔は、真剣そのものだ。
 
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