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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 
 
「な、なんで美幸夫人のことを話したら、呪われるの?」

「噂によると……、美幸様が特殊な生まれで、生まれながらにひとを呪い殺せる力があると」

 あたしは眉間に皺を寄せた。

「私達はその時いなかったんですが、それで渉様の母君が亡くなったと」

「……だけど、美幸夫人だけではなく、せ……渉さんもその場に居たのよ?」

「はい。そう聞いてますが、渉様の目の前で、超能力のような呪いのパワーを母君に向けたのではと、そう、私達には伝わっています」

「でもシゲさんは平気じゃない? シゲさんが美幸夫人の世話をひとりでしているんでしょう?」

「あのひとは……、呪いもかからなさそうだし」

 なんていう、理屈。

 だけどわからないでもない。
 鉄仮面女は、すべてを弾きそうだから。

「たまに、タエさんも奥様の部屋に入っていくのを見てますが、ふたりが許されているのは、きっと若くないからだと思います。だってシゲさん、49歳ですもの!」

 49歳だったのか!!

 何年あの瓶底眼鏡なんだろう。

「タエさんは、おいくつ?」

「わかりません。シゲさんくらいしか話したことがないと思います。見た目、70歳過ぎてますよね……。あのひとのこと、本当にわからない。だから気をつけて下さい」

「気をつける?」

 三人は真剣な顔で、口を揃え、そして声音を低めて言った。

「多分あのひと、奥様のスパイです」

「ど、どういうこと?」

「……いつもすぐ消えるくせして、噂話をする私達の傍に突然立って、じっと見ている……」

 突然に視線を感じたあたし達は、壊れたゼンマイ人形のように、ギギギギと不快な音をたてるかのように、ゆっくりと顔を、視線の先に回した。

 そこには、こちらをじっと見つめている――、

「ひいいいいいっ!?」

 噂の張本人、タエさん。
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