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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  

 タエさんが、氷のような冷えた視線で見つめた三人は、竦み上がって走り去ってしまった。

 タエさんがこちらに来る。

 あたしは内心震え上がった。

 老人とは思えない威圧感。その眼光。

 お香の匂いが鼻腔に広がる。


「なにを聞いた!」


 嗄れた低い声。


「な、なにも」


 思わずあたしは仰け反り気味に、頭を振った。


「この家のことを嗅ぎ回るではない!」


 青白い皺だらけの顔をあたしが呆然とみていると、はっとしたように顔を伏せ、遠ざかっていく。


「び、びっくりした……」


 気づいたら背には壁で。

 あたしは無意識に後退りをしていたらしい。

 額には汗びっしょり、冷や汗をかいていたのか。


「呪い……」


 こんな展開、思い切り想定外だ。

 あたしは現実的な考え方ではあるけれど、お化けは普通に怖い。心霊写真なんて見た日にゃ眠れなくなる、不可思議現象をすんなり信じてしまう性質だ。

 当然ながら、あたしに不思議な力があるわけではないから、それが存在するという真偽のほどはよくわからない。

 平凡な女だから、この忍月の屋敷に呪いの力なんてものがあるのかどうか、さっぱりわからないけれど、それでも今このタイミングで出てくるとは思わなかった。完全、拍子抜けして今後の対策がまとまらない。

 なんだか、同じ屋敷の中にいる美幸夫人が遠ざかった気すらしてくる。


 な ぜ に こ う な っ た? 


――見た目、70歳過ぎてますよね……。


「70歳?」


 最初に見た時は、そこまで年取ったようには思えなかった。これはあの子達の推測であって、実際は案外、そこまでいっていないのかもしれない。


 それでも、タエさんは怖かった。

 怒ったようなあの眼差しに、ちびるかと思った。



 美幸夫人の噂をしていたメイドが、発狂して出て行った事実。

 そしてタエさんが、美幸夫人の噂話について、ナーバスになっているのも事実。


 タエさんは一体何者なんだろう。美幸夫人の身内? 美幸夫人に恩あるからこんなことをしているの?

 
 ……呪い。
 なんだか身体がざわざわした。 
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