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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
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午後八時――。
沙紀さんから指示された紅茶葉にて抽出した、三人分の紅茶を入れたティーポットと、ティーカップをお盆に載せ、沙紀さんは嫌がる専務と朱羽を両手で引き摺るようにして部屋に向かう。
「もう忘れているって。ボケ老人だから」
「当主はしゃんとしてるわよ、ほら観念なさい」
駄々っ子のような専務と、憂鬱そうな顔をしている朱羽。
いやあ、兄弟だね。白いニットのシャツがお揃いだよ。
お顔は反対のタイプだけれどね。やはりあたしは、専務は格好いいと思うけれど、それでおしまい。
コンコンコン。
返事があって部屋を開けると、朱羽の部屋より大きい、応接のソファに当主が座っており、椅子まで手前に用意して、やる気満々だ。
もし専務と朱羽の心情を優先して訪問を諦めていたら、当主はずっと座って、来ない待ち人を待っていたのだろうか。
どうみても、孫と戯れたい様子だ。
あたしと沙紀さんが紅茶をテーブルに置いて立っていたら、当主にパートナーと一緒に座るように指示され、当主が一人用の椅子に腰掛けた。
「その、す、すま、すま……ふぉ!の使い方だが」
すました顔で、言いにくそうに当主が言う。
最後のふぉの部分で白いヒゲが勢いよく揺れたから、沙紀さんと失笑してしまった。
あたしと沙紀さんのスマホしかないため、レクチャー用にそれを出した。
「渉、朱羽。お前達はないのか?」
「取り上げられましたよ、シゲさんに」
「私もそうです」
「私ではないぞ?」
「だったら美幸さんでしょうね」
当主は知らなかったのか。
美幸夫人に牛耳られた忍月の体質が問われる。
だからこそ、専務も朱羽も苦しめられてきたのだから、それをなんとかしないといけない。当主もまた。