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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「副社長……、ああ栄一郎か」
おお、初めて聞いた副社長の名前。
誰もが名前を呼ばなかった、ただの副社長。
「あやつ、そこまでちょっかいかけたのか、朱羽の会社に」
「ちょっかいなんてもんじゃないですよ」
専務が説明した。
それを目を閉じて聞いていた当主。
「……美幸と組んで動いていたのは知っておったが」
少し表情に苛立ったようにも見えた。
専務は、当主が暗躍して副社長のバックにいるかもしれないと言ったことがあったが、当主ではなく美幸夫人が裏に居た。
しかも、次期当主に副社長を据えようと計画していた。
好き勝手な行動をとる美幸夫人、どう制裁が加えられるのか。
「結城くんも、大変じゃったんだな……」
結城より孫!
「結城くんの失いたくない友達が、朱羽だったとはな……」
だから孫! 孫を中心に考えようよ!
そこらへん、孫想いだということを認めたくない天邪鬼さを出しているのか、しばし結城の名前が出た。
「結城くんも、ここに呼ぶといい」
「結城に財閥を継がせますか?」
苦笑して専務が言うと、そこは断固否定。
仲良しと次期当主は別物らしい。
……しかし結城、どんなトークをしたんだろう。
それが不思議で仕方がない。
「あの、こちらにいらっしゃるタエさんとはどんな方なんですか?」
沈黙が続いたから、あたしが切り出すと、当主は途端に固い顔をする。
「なぜ?」
「いえ、ご病気だと聞いていたので。皆さん70歳くらいだと仰られるんですが、実際どういう素性の方なのかなと」
あたしはあくまで、無邪気さを装った。
「会ったのか?」
「はい。すぐいなくなったり、俯いたりしてしまいますが」
「……美幸の知り合いだ」
すると専務が驚いた。
「え? そんなメイドがいたの、俺、初めて聞きました」
「お前がここを出てから、連れてきたからな」
「俺、見てねぇぞ。お前達は?」
朱羽も沙紀さんも頭を横に振った。
「病気でいつもいなくなってしまうみたいなの」
「70歳のメイド……」
朱羽が唖然とした。
……色々想像しているんだろうな。