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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「お香のいい匂いがして、背筋は曲がってないよ。あたし、皆が70歳とは言ってたけれど、もっと若い気もするんだ。美幸夫人の噂がたたないように動いているみたい。……やっぱり知り合いだったんだ、皆知らないよきっと。怖がってたし」
朱羽は目を細めた。
「そのほかに何か聞いたか?」
当主があたしを見る。
その眼差しに、どことなく怯懦(きょうだ)の色が混ざっている気がした。そしてそれに、皆も気づいた。
「なにも聞いてません。美幸夫人を理解するために、彼女の話を聞くことが出来ません。箝口令が出ているらしくて。それならば、やはり直にお話をお伺いしたいと思います。彼女の部屋に行ってもよろしいですか?」
「……陽菜さんの結論で、朱羽と渉は……」
「それを考えずに、ベストを尽くします。結果を気にしていたら、いつまでたっても理解が出来ません。あたしにはまず、美幸夫人の情報が足りなさすぎます。箝口令はどうしたら解けますか?」
箝口令とは呪いのこと。
呪いを解くためににはどうすればいい?
「それは美幸自身が解かねばならぬ。こればかりは、ワシの力が及ばぬ。ワシはなにも言えぬ。そしてその箝口令は呪いとなり、屋敷を覆っておる」
"呪い"
「それは、破戒無慙(はかいむざん)の報い……だ」
なにやら重い言葉に、場は静まり返った。