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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「色々なご意見がございましょう。これもひとつの見方。彼女はしていけないことをしてしまっているから、同情の余地もないと言われればそれまでです」
それにしても潔い。
もっと感情的に美幸夫人を擁護して終わるかと思いきや、それでも客観的姿勢を貫こうとする。
だけどそのおかげで、美幸夫人もまた被害者になりえるだけのものがあったことを加味して、理解しないといけないだろう。
「シゲさん。あなたはいつからここにいたっけ?」
専務が訪ねると、シゲさんは口元に薄く笑みを浮かべた。
「奥様と同じ時にここにきました。私には妹がふたりおりますが、貧しい家のため、タエさんと同じく、奥様の紹介でここにきました。……渉さまが本家に住み始められた時には、私はもうここにおりました」
専務は明らかに不審そうな顔をして考え込む。
「記憶ねぇぞ、俺」
「かもしれませんね。前はこんな眼鏡も、こんな髪型もしておりませんでしたし、もっと使用人は多くおりましたから。私は、その他大勢のひとりであり、新人でしたので」
「何歳なんだ、シゲさん」
「私、今年49歳になります」
「ということは、俺より15年上か」
ということは、専務は35歳なのか。
杏奈より年上だろうとは思っていたけれど、年齢を聞くのは初めてだったりする。
「20代前半なら、あの時確かに山といたなあ」
「はい。今では私が長老のようになってしまいましたが」
シゲさんは素っ気ない。
「いやいや、タエさんがいるでしょう」
「彼女は……まあいいでしょう。恐らくお話することになるかと思いますので。あの……奥様の言葉が間違った解釈をされないために、そして奥様の精神の安定のために、私も同席してもよろしいでしょうか。お話の邪魔にならぬよう、後ろに立っておりますので」
「まあいいけどよ。確かにあのひとの言うことは信じられないことばかりだが、あんたはあのひとのことを、良い悪い言えるようだから。お前らもいいか?」
あたし達も頷いた。