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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 


 急に温度が冷え込んで、嫌な予感がしたあたしはじたばたしたが、課長の手を振りほどけない。

 大人の男の力だ。子供のものではない。

 そう思うと余計彼を男として意識してしまったあたしは、パニックになりながら抵抗するのだが、彼はびくともしない。

「課長、離してくだ「好きでもない男にあなたは抱かれるくせに、俺とはそこまで嫌ですか。……9年前のように、今も逃げ出すほど」」

 
 怒りを帯びた低い声でそう言い切った課長は――


「あなたのせいだ」


 そう吐き捨てるように言うと、


「なっ、んんんっ!?」


 あたしの唇に噛みつくようなキスをした。


 あたしは呆然としながら、顔にあたる眼鏡のレンズの冷たさを感じていた。

 あたし今、なにをしているの?


 遠くにあるあたしの意識をこちらに引き寄せたのは、痛いくらいの視線。

 レンズの厚み分の距離から、あたしを見る切れ長の目は、暴虐な光を宿しているというのに、どこか悲しげで、どこか切なげで。

 思わずそれに胸を突かれて吸い寄せられてしまった瞬間、その長い睫が震撼して瞼が閉じられると同時に、課長の舌があたしの唇をぬるりと割って入ってきて、あたしの舌を絡め取った。


 あ、やだ……気持ちいい。

 声が漏れちゃう……。

 
 ……じゃないだろうが、あたし!!
 

「っ!!?」

 
 課長の突き飛ばして逃げようと動かした両手は、逆に課長にとられて、彼の手は向きを変えた。そう、昨日の歓迎会の時のように。

 だが、あたしの掌を握った彼の手はさらに動き、あたしの指と指の間に自らの指を差し入れ、ぎゅっと握ってくる。


 顔をふって避けようとすると、あたしの手ごと彼の手が、あたしの頭を抑え込んで、激しく舌を絡めてきた。


 理性が抗しているのに、身体がこのキスに溺れてしまう。

 あれだけ結城に抱かれたのに、熱くなる身体が濡れてくる――。
 
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