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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 
 
 明度を落とした部屋の中、飾り棚の上に置かれた箱のようなところの扉が開いており、一筋の白煙が靡いている。

 これは、線香?


「話とは、なに……出ていって!!」


 隣室から顔を覗かせた美幸夫人。

 会いたくても今まで会えなかったそのひとは、確かに彼女の声を嗄れたものにさせて、さらに暗く照明を落とした。

 風邪でもひいて、そのやつれた姿を見せたくないとか?

 よくいるよね、美人さんなのに、いつの時も美人であるために頑張るひと。結婚しても化粧を落とせない美人さん。

 ……化粧を落としたら、別人かと思えるくらいに凄いんだろうか。

 
「奥様、ご当主に言われたのです」

「そんなはずっ」

「奥様。もう、夢見る時間は終わったのです」

「シゲ!!」

「だから私も、この姿をやめます」

 
 シゲさんは、眼鏡をとってあたし達を見た。

 そこにある顔は――。


「……私には、妹がふたりおります。年子の妹が、美幸です」


 そこにあったのは、美幸夫人と同じ眼差し。
 
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