この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
ただメイドだからか、化粧はされていないが綺麗だ。
だったら美幸夫人だって綺麗な顔立ちをしているよね。
「美幸。もうわかっているんでしょう? もうタイムリミットよ」」
「違う、違う――っ!!」
美幸夫人と相似した、くっきりと整った顔をしているシゲさんが、声をかけながら、隣室に歩いていく。
まさかあのシゲさんが、こんな綺麗な顔をした美幸夫人の姉だったなんて。あたしは言葉も出ずに朱羽を見ると、唖然としている専務や沙紀さんとは違い、朱羽だけは動揺もしないで厳しい目で見ている。
「美幸、私……覚悟を決めなさいって話していたでしょう。美幸は今までしたことについてツケを払わなきゃ」
「なんで私が! 悪いのはあいつらじゃないっ!! 私を、この私を!!」
「美幸!」
「嫌よ、見せたくないっ!! やめてよっ!!」
彼女がどんな嫌がっても、話をしない限りはあたし達も終わらない。具合悪いのなら、救急車でも呼べばいい。
あたしは足を踏み出した。
そして隣室の前で座って、床に手をついて頭を下げる。
「美幸夫人。お願いです、お話をさせて下さい」
「嫌よ、出ていって、出ていけっ!!」
「具合悪いならお医者さんをお呼びします。もしお化粧をしたいのなら、お化粧の間待たせて下さい」
「うるさい、黙れ、黙れ、黙れ――っ!!」
半狂乱の声。
「ここから出ていけ――っ!! 出ていくのだ――っ!!」
薄暗い空間から、ものが飛んで来る。
当たる!!
見えずに勘だけでそう思い、思わず目を瞑ったあたしだが、鈍い音がしたものの、あたしの顔に命中するものはなかった。
朱羽が、あたしを庇うようにして、背中に受けていたのだった。
「朱羽!! 大丈夫? どこぶつけた?」
「大丈夫だ。俺は全然平気。あなたは?」
「あたしは大丈夫。でも朱羽が……」
「渉さん!!」
その時、朱羽が専務を呼んだ。
「壁の照明をつけて下さい」
「あ、あ?」
「やめろ、点けるなっ!!」
「早く!!」
パチッ。
急に明度が戻った室内で、しばし暗さに慣れていた目がチカチカした。
そして。
「え……」
シゲさんの横に居た女性。
それは――。