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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「美幸は、整形とストレスで……外貌が変わってしまいました。渉さまが本家をいらっしゃった頃からその兆候が現われ、渉さまが本家を出られた後、かなり深刻な問題となり、美幸と瓜二つの姿態を持つタエを、美幸に仕立てました。これは、私の発案です」
いまだ奇声を揚げ続けるタエさんこと、それが真実の美幸さんのなれの果てだとシゲさんは告げる。
「では、俺と渉さんの母を殺した美幸さんは……」
「はい。この美幸です」
シゲさんは、老女を哀れんだ眼差しで見た。
「この美幸は人前に出れなくなってしまった。だから近年タエが美幸の代わりをしていました。朱羽さまの見合いの席についていたのもあそこにいるタエ。声をお聞きになればわかると思いますが、美幸は声帯も弱まり、もう嗄れた声しか出ません。声と顔が人前で必要な席においては、すべてタエが出ておりました。ですので、渉さまが本家にいらっしゃった時は、まだかろうじて美幸本人でしたが、出て行かれてからはすべてタエが美幸のふりをしています」
「俺が一人暮らしを始めたのは、アメリカから帰ってきた時だ。では、俺がアメリカに行っている間……」
「はい。その時から既にタエを呼んでおります」
「それは当主はご存知なんですか?」
朱羽が尋ねると、シゲさんはゆっくりと頷いた。
「ご存知です。ご当主の許可なくては、こんなこと何年も続けてこれませんから」
確かにそうだ。
当主は最初から、美幸夫人に対しては言葉を濁らせていた。
追い出せない理由があるとか、当主の権限ではなにも出来ないとか。