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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

 タエさんが言った"あの男"、きっとそれは――。

「銀座のホステスで№2までに上った美幸を、忍月の当主が無理矢理!」

 タエさんは怒りを滲ませ、シゲさんが代わりに言った。

「美幸が言っていたのですが、銀座のクラブに来る本当の金持ちは、いいカモにされないように警戒しているのか、そう簡単に高い装飾品を身につけたり、金持ちだと自慢しないそうです。ただ成金だけは、自分がいかに金持ちなのかと自慢したがり、バッグの中に札束を詰めたり、何百万と使っていくようで。その中に、ご当主がいたそうです」

 当主は確か、名取川文乃と別れたあと、壊れていったと言っていた。

「丁度美幸は、結婚を意識していた男性がいたせいもあり、強引で金をばらまいて言うことをきかせようとする彼が、いかに美幸に金をかけても靡かなかった。そこで、恫喝や嫌がらせが始まり、美幸はクラブにいれなくなってしまった。その上に、結婚相手が自殺し、美幸を恨む遺書を残していたそうです。そこには、金に目がくらんで愛人になるから、もう彼は必要ないと、伝言を頼まれた男が来たということについて書かれてました。忍月の当主が裏でなにをしていたのか、それでわかりました」

「あの男は、愛人を沢山作っていたくせに、美幸を愛人にするために、美幸の人生を壊した。妻がいるくせに、至るところでレイプした。美幸が子供を産めなくなったのも、当主のせいよ! それなのに、子供が産めない身体だとわかった途端、今度は忌々しくも荷物扱いした!」

 場は静まりかえっていた。

 美幸夫人の顔をしたタエさんが、美幸夫人の心情を語っている。

 ねぇ、なんか……ねぇ……。

「ここに美幸を連れて来てもいい性処理の道具!! 所構わず犯した。息子の妻となっても。それで美幸が孕んだら、息子の子供だということにする気だったのよ。そして息子は息子で手当たり次第に女に手を出し、美幸のことは子供が産めないのなら無意味で無価値だと、女と一緒に嘲笑った。勝手に連れてきて、なにそれ!」

 うまく言えないんだけれど……、なんであたしの心に来ないのだろう。

 なんでこう、録音を再生している気分になるのだろう。
 
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