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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「でも、出会いは……」
「おそらくタエさんは、何度か美幸さんの真似をしていたのでしょう。美幸さんもわかっていて、ホステスをさせていたのでは? 長期なのか短期なのかはわかりませんが、そうでなければタエさんが、美幸さんが当主にされたことを語れません。多少誇張があったとしても、当主は美幸さんに強く出たのでしょう。女は道具だと。タエさんが出勤した何回かは、当主と居合わせたはず。そして恐らく、亡き父とも」
「お父さんとも……」
「連れてきたんでしょう。銀座のホステスは情報が色々入るし、次期当主を連れてなじみの店に行き、そしてもしかすると……亡き父は当主にいたぶられていたタエさんを助けたのかもしれません」
タエさんの拳が震えている。
朱羽は正しいことを言っているんだ。
「タエさんは憤慨し、当然そんな目にあっている美幸さんの恋心など気づくはずもなく、そしてタエさん自身もそんな男の息子、しかも財閥の次期当主への恋心など、認めようとしなかったんでしょうね。しかし恐らく、美幸さんが結婚を意識していた相手が出現したあたりくらいから、様子が変わる。タエさんは、"結婚"という言葉に反応してしまったのではないでしょうか。シゲさん、美幸さんは付き合っている男性を今まで紹介したことがあったんですか?」
「いいえ」
「まあ何度かホステスを入れ替わっているのなら、タエさんにも気づかれずに逢瀬は出来たのでしょうけれど、そうした想定していなかった男性が現われ、そこでタエさんは考えてしまった。結婚という縛る方法を」
結婚――。
「タエさん。美幸さんが当主を愛しているということはどの時点でお気づきに?」
ややしばらくして、タエさんが口を開く。
「美幸と付き合っていた彼が、美幸が様子がおかしいって。誰か好きなひとが出来たのではないかって。その様子は、私も同じだった」
双子は、親子をそれぞれ好きになった。