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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「どちらかが結婚出来れば、入れ替わればいいと。昔のように、小学校の頃から入れ替わっても誰も気づかなかったから、だから……」
「あなたは、亡き父にそれをいいましたか?」
タエさんは緩やかに頭を横に振った。
「なぜ?」
「ふられてしまうし、もう会えなくなる。それに双子と言うと、美幸に興味を持ってしまう。昔から美幸はモテてたから、言いたくなかった。だったら、私自身が当主を好きでたまらないと、おかしくなりそうだと相談する形にしようと。……嫉妬、させてみようと」
「そうしたら、亡き父は言ったんですね」
「……。"父には妻がいる。冷え切っているとはいえ、不倫の形はよくない。だとすれば、私と結婚して本家に居ればいい。あんな父でも愛してくれるひとが近くにいるのなら、変わるはずだ"」
「それだけですか?」
「"私は病気で長くは生きられない。それまで、我慢してくれ。最後ぐらい、人助けという善行をしたい"」
亡き次期当主は……、タエさんを愛しているから求婚しようとしたわけではない。あくまで、タエさんを哀れんだからだ。
「それでも、それでも私は……」
「なぜそこであなたは双子だと告白するとか、あなたが嫁ごうとしなかったんです? どうして、美幸さんの影になろうと、本家の使用人としてきたんです!」
「朱羽、使用人で先に来たのは、シゲさんだよ?」
「シゲさんではない。タエさんだ。そして眼鏡をかけて髪型を変えていたから、いつしか屋敷では、変貌した美幸さんのふりをする本当のタエさんと、タエという名前の使用人のふりをした美幸さんが混在し、シゲという名の眼鏡をかけた使用人は、いつしか本物のタエさんからシゲさんに変わった。そうですね、シゲさん」
「……っ」
「シゲ、もういい」
嗄れた声の後押しされるように、シゲさんは頷いた。