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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「私は、昔事故で側頭葉を傷つけてしまったため、薬を飲んでいないと色情狂になってしまうくらいに、セックスが好きで好きでたまらないの。後遺症とか言われたけれど、元々のものが出てきたような気もするし、真実はわからないけど。性依存ではなく、インフォ……マニアとかいう」

 インフォマニア? 情報マニア?

「ニンフォマニアですね」

 朱羽が微動だにしないで、平然と訂正する。

「そうそう。さすがは次期当主に当主が推すだけあるわ」

「いえ。常識ですから」

 眼鏡がキラーンと光る。

 ……非常識でごめんなさい。

 タエさんは続けた。

「それと忍月は、聡明な女を求めていた。当主が目をつけたのも、死んだあのひとが私と仲良くしてくれたのも、すべて美幸が頭がよかったから。美幸が馬鹿だったら見てもくれなかった。だから私があのひとの近くにいるためには、美幸しかいなかった。……だけど美幸は嫌がった」

 タエさんは自分のことを卑屈に思っているけれど、馬鹿ではないから、ずっと美幸夫人のふりを出来たのではないだろうか。何度も公の場で発言をしたのだし、美幸夫人のフォローが届かない場所でも、彼女はちゃんと務めを果たせたのだから。


「美幸さんが嫌がったのは、当主を愛しながらも当主によって虐げられていたからですね」

 朱羽の言葉に、タエさんは頷いた。

 老女は、身動きもしないで聞いているようだ。

「そう。美幸は当主のレイプで子宮が傷ついて、そのために子供が産めない身体になってしまった。そして銀座のクラブを買い取り、美幸を働けなくした上で執拗に追ってきたから。そんな男と同じ家にいたくないと。だけど息子と結婚したら、さすがに嫁にまでは手を出さないだろうということ、そして当主が冷めてきた気配もあったから、復讐のために息子と結婚をした」

 愛すれど憎む男の息子が、美幸夫人を紹介した時、当主はなにを思っただろう。反対したはずだ。しかも彼女は水商売の女だからと。

「反対されたでしょう」

 あたしが思わず言うと、老女が嘲るようにして笑った。
 
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