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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
朱羽の父親は、同じ顔で求婚したタエさんではなく、美幸さんを愛したのか。
「亡き父は、美幸さんへの恋心ゆえに、あなただけは抱こうとしなかった」
「……っ」
それは、確かにタエさんにとっては屈辱的だ。
「そして。当主に美幸さんが抱かれていないというのなら、あなたが抱かれたことになる。あなたが当主に抱かれることについて、問題点がふたつある。ひとつは、あなたも当主を嫌っていた。もうひとつは、当主は美幸さんの身体を見知っている。……だとすれば、抱かれたのは故意的で、当主は美幸さんとは別の女性を抱いていることを自覚している可能性が高い。教えたのは、あなたですね?」
タエさんは観念したように項垂れた。
「当主の……罪悪感を利用した」
「それは美幸さんの身体を壊したことについてですか?」
「それもあるけれど、私達姉妹が窮地に陥った両親の借金。あれは元を正せば当主のせいだということが、本家で盗み聞きしていてわかって。当主のミスが引き金で、罪ない両親が責任をとることもなかったのに、それがわかってもミスにしたくなくて、それを隠蔽した。部下が恐らく……始末したと」
シゲさんだけは驚いた顔をした。
美幸夫人はわかっていたのか、落ち着いている。
「私達がその娘であることを当主は知った。だから私も、当主が知らない、双子の話をしてあげた」
「なんのためのギブアンドテイクですか?」
「裏切りもののあのひとと美幸の上に就くために、私は当主の子供を産みたかったのよ! 私に傷口を抉られ当主は渋りながらでも、私を抱かなくてはならなかった、本妻が居る家の中で」
専務が、疲れ果てた顔をして言う。
「その一方で、親父は美幸さんの恋慕すら"子供"……いや、自分の複製か。それを残そうと色に狂って、他を顧みなくなった」
「子供といいながらも、渉さんを手元に寄せたのは、生まれた子供を可愛がっていたからだと思います。どこかで理性はあったかと」
「しかし、なぜ俺達のお袋を殺したんです、美幸さん!!」
専務が声を荒げた。
「そこまで、子供が出来ないことを卑屈に思ってたんですか?」
「卑屈にさせたのは、彼女達の方だ」
美幸夫人はぼそりと言った。