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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「朱羽の母親は、媚びることがうまくて、色々な高級品をあのひとから買って貰っては、それを自分のステータスにして勝ち誇っていたような女だった。身体を武器に金をねだる……まあ前身は私と同じ水商売系だ」
朱羽の表情が険しくなる。
「男を誘う術を心得ており、あのひともころりといってしまった。そして朱羽が腹にいるのを知るや、あのひとと私を脅してきたのだ。次期当主にしろと。子供を産めない女などさっさと捨てて、朱羽を認知して跡継ぎにしろと。そして勝手に私の部屋に入り、窓から私の私物を捨てて笑った。今日からこの部屋に自分は棲まうのだと。次期当主を産めない女は、使用人部屋に行って、自分に仕えろと」
その時の美幸夫人を考えてみる。
自分の夫に取り入った女が、与えられた金品を愛情だと勘違いして、子共を身ごもっただけで優位に立っていると思えるその傲慢さ。
「……旦那様や当主に相談しなかったんですか? タエさんでも……」
「タエの、私に対する反感はとうに見抜いていたわ。相談をすれば、タエが乗っ取るだろう」
タエさんが気まずそうにした。
「男達は、子供がいるというだけであの女を大事にした。渉の母親の時もそうだ。私が怒ったりする度に、子供がいるのが羨ましくてヒステリーをあげているだけだと思われた。そして朱羽の母親にも言われた。悔しければ、子供を作れと。若くはないお前に子供を産めるのかと。……子供が産めないというだけで、私の人格は否定されていったのだ」
「それでも愛人の子。正妻である美幸さんを蔑ろに出来るわけが……」
「だから、私は自由にされた。なにをしてもいいと。……私を気遣うふりをしただけで、女同士のいざこざが面倒になっただけだ。愛人を管理するのが私の務めだと、勝手に言われた。……この鬱屈とした思いはどこにいけばいい。私は女ではないのか? 年老いたり、子供が産めぬならば、それだけで私の存在価値はないのか? なぜ夫の浮気相手を、私がまとめねばならぬ。なぜ良いようにされても、我慢しないといけぬ――」
同じ女として、彼女の悲しみに共感した。
確かに動機は復讐とか色々あっただろうけれど、それでも自分が虐げられるとは思わなかったはずだ。
やり場のない思い――。