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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「あの女は、天下を取ったかのように傲慢に振るまい、女主人のようになって私を正妻の地位から引きずり落とそうとした。私の矜持は、彼女によって打ち砕かれた。そんな女が、お前の母親よ」
美幸夫人が、朱羽の辛そうな眼差しを丸ごと受け止めた。
「そして私にこう言った」
――なに、その反抗的な目。そんなに私を追い出したいの? 主人面して? だったら、出ていってあげましょうか。私に1億出すか、私の子供を認知して跡継ぎにするか。
「1億……」
「あの女は、忍月の金を手に入れるために、当主やあのひとの弱みを握って脅していたようで、それに辟易していた当主が、ぼんと1億、手切れ金として渡した。子供は要らないから、出て行けと」
その時は要らないと言われ、今は要ると言われている朱羽が可哀想だ。
「そう思ってなかったんだろう彼女は、渋々出ていったが、それで味をしめたのか、それ以降も金をせびり来た。しかし忍月の男達が、金を出さない強硬な姿勢を見せた時、あの女は、忍月に寄生するために子供を使おうとした。お前にエリートの道を歩ませ、そのまま忍月に入れようとした。1億も貰いながらも、がめつい女よ」
あたしは朱羽が有名私立学校に進んでいたのを思い出す。
「しかし家には、お金がなかった! だから俺はバイトをして……」
そうだ、朱羽は苦労していたのだ。
「渡した金は湯水のようにあの女が使った。しかしお前はいいところの学校に入れたのだろう? なぜあの女がその資金を貯めていたのか、そこに執念じみたものを感じたことはなかったのか? お前が行きたいのだと言っていたのか?」
「……っ」
「そして。その金で遊んだ暴力団絡みの男に薬を打たれ、あの女は壊れた」
「薬……」
「お前はあの女が男なしではいられない身体になっていたのを知っているのか? お前はあの女の狂ったような淫乱ぶりを知っていたのだろう? なぜそのようになったのかと、考えたことはなかったのか。生まれつきだと?」
「俺は……」
泣きそうな朱羽の手をきゅっと握った。
頑張れ、どんな真実が出ても、挫けるな。
そう思いながら、手を握る。