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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
なにも言えずにいる中、沙紀さんが言った。
「あなたが免罪符を得て、自分はまともだというのなら、なぜ渉と寝ていたんです。憎い女の子供と」
美幸夫人は言った。
「渉は、私の性欲の捌け口だ」
専務と沙紀さんの顔が歪んだ。
「私はただ耐えねばならぬのか? 私にも本能というものがある。子供が産めぬ身体は、性欲を宥めることもしてはならぬのか?」
ああ、その考えは。
「……あなたは、忍月の考えに染まってしまったんです、美幸さん」
あたしと同じ考えを、沙紀さんが悲しそうに言った。
「虐げることに対する正当性を主張することで、あなたも、まともな判断が出来ずに黙認していた旦那様や当主同様、正常と異常の境界線を越えてしまった。傷つけられる悲しみを知っているのに、渉を傷つけ苦しませることに、自分の擁護で正当化しようとしていただけのこと。自分がいいのだから、ひとになにをしてもいい……その考えは、忍月の人々となにが違いますか?」
老女は乱れた息をしている。
「それに渉に手を出したということにどんな意味があるのか、あなたは気づいていないようですね」
沙紀さんは冷ややかに言う。
「それは渉の父親の代理。あなたが求める夫が振り向いてくれないから、渉と寝たんでしょう? 渉は子供が欲しいなど言わない子供だから、あなたは渉より優位な"女"になれるから。自分は、"男"が反応する"女"であることを再確認したかったから」
「な……」
「もっとはっきり言いましょう。あなたは、子供ばかりであなたの"女"を必要としない旦那様を愛していた。あなたもまた、タエさんと同じひとを好きになってしまっていた」
あたしは息を飲んだ。
「そ、そんなことは……」
「そうですか? 私にはさっきからあなたが、旦那様に正当に愛されたいと言っているだけのようにしか聞こえません。あのひととの子供が出来たからといって、あのひとの一番になるのを許したくない。自分は子供がいなくても愛されたい。……そんな風に」
――あの女は、自らをあのひとの正妻だと言い張り、あのひとに一番愛されている母子だと言った。いつもお金をくれて、子共を育てているのだと……それが許せなかった。
――私は子作りの道具としてしか見られていなかった。顔を合わせば子供子供……どれだけ私の心が傷ついたか、あやつはしらぬ。