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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「妹すらなにか企んでいるようだし、ひとりぼっちが寂しくて、旦那様に助けて欲しかったんでしょう? 愛情=子供ではないのだと、そう安心したかっただけなんでしょう?」
専務の苦しみを一番にわかって心を痛めたであろう沙紀さんは、その真っ直ぐな瞳で、専務を苦しめた張本人と対峙する。
その眼差しは強く、だけどどこか怒りを帯びながらも慈愛深いものさえ垣間見せる。
小柄な沙紀さんが大きく見えるのは、その大きな心にあるのか。
「……愛情などあらぬわ」
しかし老女は、強い口調で否定する。
「他に女を作って子供を産ませている男を、好きになると思うか! お前なら、好きになれるのか! 渉の子供を私や名取川の養女が産んでいたら、それでも渉を愛せるというのか!」
……まるでそう言い聞かせているかのように。
あたしは想像してみる。
あたしは子供が産めないとして、朱羽が子供が欲しくて他の女との間に子供を作ったら。
あたしはその子供を認めることが出来るだろうか。
朱羽と一緒に、その子供を愛せるだろうか。
……色々なものが心に渦巻き、がんじがらめになりそうだが、それでも朱羽が人工授精ではない妊娠を望んでいたら――。
もしかするとあたしは、最終的には頷くかもしれない。
嫉妬と悲憤に駆られながらも。
あたしは聞いた。
「美幸さんは、ご主人との間に、子供は欲しくなかったんですか?」
「え……」
「もしも子供が産める身体であったのなら、ご主人が希望する通りに、子供を産んでいたんですか?」
老女は僅かに動揺する。
「私は、子供を産んだ経験はないですが、それでも……あたしが妊娠出来るというのなら、朱羽が子供を望んでいたのなら、あたしは喜んで子供を産みたいと思います。沙紀さんもそうでしょう。美幸夫人は、ご主人との間に、子供を望んでいたんですか?」
「そ、それは……」
「ではなぜ、ご主人の子供を宿している女達に、そこまで苦しい想いをされたのですか? 妊娠が出来る身体であってもなくても、嫌いな男との間の子供は欲しくないと思えば、相手の女にももっと違った反撃の仕方があったと思います」
「……っ」