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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  

「……あたしも、沙紀さんが指摘された通り、あなたがご主人との間に子供を望んでいたとしか思えない。産みたいのに産めなかったから、辛かった。あなたは当主を好きだったのかもしれませんが、気持ちが身近な男性に移っただけ。それとも当主をまだ愛し続けていると言うんですか?」

「恨みこそすれ、愛してなどないわ! 当主も、あのひとも!」

「しかし当主の子供を宿したいとは思わなかったんでしょう? 渉さんと寝ても、渉さんの子供が欲しいと思いましたか? そこまで渉さんに許していたんですか? 女である自分を慰めるための子供を欲していたと?」 

「産みたくない、どの男の子供も欲しくない! あのひとが子供子供と言う度に、嫌悪するだけで子供のいる未来も想像出来なかったし、絆されなかった! 勝手なことを言うではない!」 

 老女は駄々をこねるように叫ぶ分、あたしは平静さを強めた。

「美幸さん。……屋敷の外の小屋のようなところに、廃棄車がありました。そこから出てきたのは、子供用のぬいぐるみとか玩具でした。それも古くて、かなりの量。あなたはそれを知りませんか?」

「……し、知らぬ」

「お話を聞いていれば、ご主人の子供を宿した女達はこの屋敷では産んではいないよう。渉さんですら、生まれたのは外部でそこから屋敷に入ってきた」

「……っ」

「だとしたら、あのたくさんの子供の玩具は、彼女達が集めたものとはいえない。だとすれば、誰が買い求めて、誰が捨てたものを、ここの従業員が拾ったのでしょう。かなり古いものを」

「……っ」

「私はご主人が、美幸さんとの子供を夢見て玩具を取りそろえていたのだと思います。そりゃあ、子供が産めない身体はそれはプレッシャーになる。だけど、子供が生まれないことをプレッシャーに思うのは、相手が嫌いではないからではないですか?」

 老女の瞳が揺れている。

「あなたはあのたくさんの玩具を見て、ただの拒絶反応しか出なかったんですか? その玩具であなたとご主人の子供が笑うその姿を、彷彿はしませんでしたか? その未来が来て欲しいとは思わなかったんですか?」

 澱んだ瞳の中の、ひと筋の若い光が。
 
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