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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「もしそう思ったのなら、そうした光景を羨ましく思えた瞬間から、美幸さんは、相手がご主人だからその子供を産みたいという気持ちに変わっていったのでしょう。相手を特定して望むことは、その相手が特別だからとは思えませんか?」
「……ち、違っ」
美幸夫人は揺れながらも認めようとしない。
わかっていて認めたくないのか、無自覚だから認めたくないのか、それはあたしにはよくわからないけれど、当主に操をたてたいわけではないのなら、もうこれはすれ違いだ。
痴情のもつれが、子供の代……専務と朱羽にかかってきたのだ。
大人達はいい。
好き勝手に恋愛して子供を産めるけれど、どんな子供も親は選べられない。
大人の事情なんて知る前に、勝手に自己保身で忍月に染まった美幸夫人から手を出されて、子供であった専務は恐怖を抱えた。
それが現実、それが真実。
そして、それを美幸夫人が理解していないことも。
「なあ、美幸さん。俺は……忍月に来てあなたを初めて見た時に、母親を含めて、ぎすぎすしてひとの温もりが感じられない本家の中で、一番のまともなひとだと思いました」
専務が真情を吐露していく。
「あなたは、緊張しすぎて胃が痛くなって蹲っていた、俺の腹を……撫でてくれたんです。誰にでも緊張はするものだからと」
老女は覚えていないような顔をした。
「母親ですら、緊張で腹が痛いと言ったら女々しいことは口にするなと叱られた中で、あなただけだった」
沙紀さんが、震える専務の横に寄り添い、背中を撫でる。
「この屋敷の中ではあなただけが俺の気持ちをわかってくれると思っていた。俺は……母よりあなたの方を慕っていたんです」
震える声。