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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
あたしは美幸夫人を見て言った。
「もしもどこかで、朱羽や渉さんに対する罪悪感があり、それを悔いているのなら、ふたりの言葉が痛いと思ったのなら、この先やり直せるチャンスはあると思います。あなたがやり直したいと思う限り、何度でも。だって、やり直せるのが人間です」
彼女は微動だにせず、あたしを見つめている。
「あたしは名取川家の養女にして貰いましたが、元々はしがない庶民です。ご縁あって、朱羽と巡り会うことが出来、今この場におります。相手が上流界の男で、自分が庶民ゆえの苦悩は、ひとよりはわかるつもりです」
「………」
「ですがあたしは、朱羽と理解しあいたいと思っています。身分違いで溝が出来るというのなら、進んでその溝を埋めたいと思います。朱羽が喜ぶことにあたしも喜び、悲しいことにはあたしも一緒に泣きたい。身分だの肩書きだのをなくせるくらい、あたしの魂を朱羽に近づけたい」
「………」
「そのためには、自分をわかってくれ、理解してくれではなく、あたしから朱羽を理解したいと思います。好きなひととすれ違いたくないですから」
「……私は、理解しようとしていなかったというのか」
「あたしから見ればそうです。ご主人もそう、朱羽や渉さんもそう。しかし唯一わかって守ってあげようとしていたのが、タエさんでありシゲさんであり。血の繋がる者だけでしか理解しようと思えないのは、まるで女版忍月のようにも感じます」
「………」
「理解されたいのなら、理解をして欲しいと思います。あたしもまた、美幸さんを理解しようとした上での結論を申し上げます……」
あたしはメイド服のポケットの裏、黒いワンピースのベルトの部分につけていた巾着を取り出した。