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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

驚いて思わず仰け反れば、椅子が半回転してあたしの後頭部が机に激突――を免れたのは、あたしの頭の下に課長の手が差し込まれたからだ。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。随分と熱心にスマホを弄られていたようで」
にっこり。
輝かしい笑顔の背景は、凄まじい吹雪。あの中に触れようものなら、即時凍死してしまいそうだ。
怖っ!
「いや、あの、その……」
だくだくと汗を掻きながら、授業中スマホを弄っていたのが先生にばれた時のような、凄まじい焦燥感に表情が強ばる。
「ああ、そんなに怖がらなくても大丈夫です。別に責める気もないですから」
そう、柔らかい口調で課長が自分の椅子に座るから、安堵して止まった呼吸を再開していた時、課長が言った。
「どうせ相手は、結城さんなのでしょう? 帰りが遅いこと、あなたが化粧を直したことに、なにか言われましたか?」
怖っ!!
結城並みの、超能力者怖っ!!
あたしが化粧直したことまでわかるのか!!
「そのスマホ貸して」
「へ?」
「LINEの画面、そのままで私に」
「い、嫌ですよ、なんで……」
「ほら、結城さんが怖い顔をして私達を見ているので、私がなだめますから。そうじゃないと、真下さんに迷惑かかりますよ?」
確かに結城が、凄い顔でこちらを見ていて、止めようとしている衣里の手を払っている。今にもこちらに来そうで、なんだか怖い。
「課長が、結城を抑えることが出来るんですか?」
猛獣が、あの猛獣を抑える猛獣使いとなりえるの?
「はい」
「どんな根拠で?」
「ああ、私が結城さんと同じ男だからです。きっと女のあなたにはわからない理屈だと思いますが」
あたしはため息をついてスマホを課長に渡した。
同性だけがわかるという理屈に期待しよう。
課長はなにやら文字を入力したようだ。
そして――。
バァァァンッ!!
結城が机を叩いた。

