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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
『皆々様へ
前略
古き因習に囚われたこの戯奴(わけ)に、お時間をお取り頂いたこと、そして拒むのではなく理解しようとして頂きましたこと、ありがたく思います。
忍月を嫌い忍月を恨み、その忍月を愛して守り、そんな矛盾を抱え葛藤しながら、数十年忍月のお屋敷にお世話になって参りました。
その中で、私の女としての人生を狂わせたご当主をお恨みし、私を追い出そうとしない主人に嘆き、私を追い出そうとする使用人達に憤慨して参りましたが、負けたくない、その一念でいつか正当なる女主人として認めさせてやろうと思っておりました。
私は、主人と結婚してから、ご当主に対する復讐よりも、我が親の敵を慕う息子であれど、それでも彼には罪がないと思った瞬間から、恐らく私は、主人に惹かれていたのでしょう。
……私にも、幼き頃より夢がありました。
子供を産んで、幸せな家族を築きたい。
そんなささやかな夢が叶わなかった。
子供が出来ないことで、主人は乱暴な子作りを強いるようになり、父親のように私を抱くようになりました。彼は、私が父親に抱かれていたことを知っていましたから、それに対して、私がご当主を愛して操をたてているのだとか、妄言や暴言もよく吐くようになり、愛在る夫婦の形ではございませんでした。
主人が荒々しくなったのは、私が子供を産めないから。
子供を産める女は、主人に優しく抱かれているのだ。
常にもやもやとした、鬱屈した思いが胸にございました。
正直申し上げますと、姉の多恵は主人に抱かれていたと私は思っており、私もまた、使用人へではなく、私と同じ顔をした姉を一番に妬んでいたのでございます。
私と同じ顔をしながら、それを潰されずに燃やされもせず、存在を唾棄されることもなく、主人を愛し愛され。好き勝手なことが出来るだけの自由がある。
加えて、私の顔は変貌している。
醜く歪んだ鬼女の姿を鏡で見た時の恐怖は、筆舌に尽くしがたく、この先の希望はなにもありませぬ。